「Google対中国」
[URL] をアップしてからも報道があれこれ続いたのでそれらを読んだ結果の私の印象を述べたい。
まず何が起きたのか復習してみたい。Googleは1月12日に、同社の法務最高責任者名で以下のような趣旨の発表をおこなった。
● 中国発の重大なサイバー攻撃にあった
● 中国の法律の許す範囲内で検閲のない検索エンジンの維持が可能なものかどうかを中国の当局と協議する
● これはGoogle.cn閉鎖や中国からの撤退を意味するかもしれない
Google問題に関する情報を整理した1月18日付のWall Street Journalの記事によれば、GoogleはGoogle.cnの自主検閲を継続 [註 1] しているという。つまり自主検閲は中国当局との交渉継続中は廃止しないということだ。しかし、含みを持たせていた協議の部分については1月22日のFinancial Timesに掲載されたGoogleのCEO、Eric Schmidtとのインタービュー [註 2] によれば
<We have lots of other opportunities in China 〓 we would like them to be successful.我々は中国では多くのビジネスの機会を有しており、それらが成功してほしいと考えている。>
であり
<“It’s very important to know we are not pulling out of China,” Mr Schmidt said. “We have a good business in China. This is about the censorship rules, not anything else.”「我々が中国から撤退しないと言うことを認識すべきだ」とシュミット氏は言った。「我々は中国では良好なビジネスを展開している。今回の問題は検閲に関する法律についてだけのことで、他はまったく関係ない。」>
とのことゆえ、Googleとしてもいったん「撤退ありうべし」と振り上げた矛を収める方向に向かっていると解釈しても良いだろう。
Googleが1月12日の発表を行った際にあちこちの解説記事で「Googleは中国に参入してからまだ日が浅いので、今手を引いても将来の利益はさておき、当面の収益には影響はない」とか「中国でトップの検索エンジンBaidu(百度)ほどのシェアを獲得していなかった」と言った種類の報道があったが、前出のWall Street Journalの総括によれば、その実Googleのシェアは百度の約6割もあったというし、百度の従業員は6387人に対して、Googleは1000人程度なので、給与の差があったにせよGoogleは中国ではそれなりに高利益、つまりは高付加価値、の商売をやっていたとみられる。1月22日報道されたSchmidt発言は、そのような高収益の商売をみすみす捨てるほどGoogleが理想主義に走っているわけではないと言う意思表示であろう(このあたり大前健一の分析 [注 3] は完全にハズレだ。名だたる経営コンサルタントの大前健一も最近はその分析の切れ味が大分鈍っている感じだ)。
となるとGoogleは一体何を考えて1月12日のような発表を行ったのだろう?答えはむしろ発表の前段の部分「度重なるサイバー攻撃」にあると見るほうが適正かもしれない。Googleは中国の拠点の職員がサイバー攻撃に関与していた可能性を調査しており、その背景には中国の拠点には中国の諜報機関から送り込まれた職員がいた可能性が極めて高いからだ。Googleの本音は中国当局に対して「スパイをゾロゾロ送り込むのはもうやめにしろ」或いは「ホドホドにしろ」、「でないともっと事実を公表するぞ」ということを表明することにあったのかもしれない。
諜報員のほうは「確度が高い」話だが、中国の拠点には間違いなく中国共産党(中共)の党員が働いていたはずだ。「中共党員が?」と言ってはいけない。中国の国営企業ならば課長クラス以上はほとんど中共党員だし、外資系の企業にも多数の中共党員が働いているのは公知の事実だ。「エッ」と思う人のために例を挙げよう。中国に拠点を構えるあるアメリカの弁護士事務所の代表社員に「あなたの在中の事務所にいるknown CCP members(公知の中共党員)の数は?」と単刀直入に質問してみたところ、しばらくモゾモゾしていたがその弁護士事務所の中国の拠点に勤める律師(中国の弁護士)の半数強に当る数字を回答されたことがある。「中国とインド(2/2)」
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