インディアンの勝つ西部劇 〓 アバター映画評
2010-01-22


私が子供のころの西部劇といえば必ずどこかでアワワワワと叫びながら馬に乗って矢や鉄砲を放ちながら主人公の白人のいる村か砦か幌馬車か汽車を襲うインディアンが出てきたものだ。そういう西部劇では、おおむね土壇場でインディアンは撃退されメデタシ、メデタシで映画が終わった。その後これではいかにも白人中心史観に偏りすぎているとの反省から、例えば「ダンス・ウィズ・ウルブス」のようにインディアンを駆逐することに疑問を持つ白人が出る映画が現れてきた。

アバターは地球が開拓を始めた遠い惑星パンドラに住む元々の住人ナヴィが、ナヴィに心を寄せるようになった地球人の兵士の助けを借りて、地球人を駆逐するまでの物語だ。つまりインディアンが勝つ西部劇だ(そういえばナヴィがなんとなくインディアンに似ていることに気がつく)。要するにこの一文で語ることができるほど単純なストーリーの構成なのだ。その単純なストーリーでどうやって2時間半以上観客を飽きさせず引っ張ってゆけるのか?そう、この映画はそれほど観客をあきさせない。答えは、スクリーン上で爆発が起こりカメラに向かって何かが飛んでくると、映画館のイスの上で思わず身をよじるくらいのリアルさをもつVFXと3D技術にある。これだけ技術の力で単純なストーリーを引っ張ることができるのかと唖然とした。ただ観客が3D慣れしてくると(後数年のことだ)、ストーリーの貧弱さをカバーしきれなくなってくる。そのときにはもっと内容のある作品でないとここまで観客を引っ張ることはできないだろう。

この映画を見ていてひとつ気になったのは、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」から相当の影響を受けていることが見て取れるのに、映画のどこを見てもそのことがまったく登場しなかったことだ。スタジオジブリは20世紀フォックスとジェームズ・キャメロン監督に対して訴訟を起こしても良いと思う。こいつらを相手に回すとなると相当お金が要るが、これだけの観客動員をした映画だ。勝訴すれば相当のお金が転がり込んでくること間違いない。アメリカにたくさんいる成功報酬で仕事を請け負う弁護士を起用し、弁護士には賠償金の過半が行けばよい、ジブリは訴訟を通じてその存在を世界に知らしめればよい、と割り切ってやってみる価値はある。
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