第二次世界大戦開戦70周年--なかなか許してくれない国
2009-09-09


第二次世界大戦のことを「太平洋戦争」とか「大東亜戦争」とか言い直している日本ではあまり認識されていないが、今年は第二次世界大戦の開戦70周年だ。

第二次世界大戦はダンチッヒ[註 1]に駐屯するポーランド軍の陣地を1939年9月1日にドイツの軍艦Schleswig-Holstein(シュレスヴィヒ・ホルスタイン)が砲撃したことを契機として始まった。ポーランドに対して開戦の火蓋を切ったのはドイツだが、ソ連は開戦直前の8月24日に調印した独ソ不可侵条約に基づき9月17日にポーランドに進攻しポーランド東部を占拠、ポーランドは独・ソの間で分割された。

[註 1: 市民のほとんどがドイツ系であったことから当時は国際連盟管理下の名目上ポーランド領の自治都市。ドイツの敗戦に伴いドイツ系の人々が放逐され現在はグダンスクと名前を変え名実共にポーランド領]

9月1日にそのグダンスクでポーランド政府主催の第二次世界大戦開戦記念行事が行われた。

ドイツは政権党が誰であっても戦後一貫して「第二次世界大戦を起こしたのはドイツの責任で、そのことを深く反省しており、このようなことが再度起こらないことを誓う」という立場を崩していない。記念行事に参加したドイツのメルケル首相は改めてこのドイツの立場を確認した。

政府関係者が時折「ポーランドはナチスに加担していた」といった発言を繰り返す(自民党の政治家みたいですね)ロシア。記念行事に参加したロシアのプーチン首相は率直に過去のソ連の行動の誤りを認め、KGBの前身NKVDによってポーランド人2万人が殺害されたカチン虐殺に関する当時のソ連の記録をポーランド側に引き渡すことを約束した。

対するポーランド。中国や韓国が折に触れて「第二次世界大戦やそれ以前の時期の両国に対する扱いに対する改悛の情が足りない」といって日本政府の対応を批判するが、レヒ・カチンスキー大統領の演説を聞くとポーランドのドイツやロシアに対する対応も似たようなものだという印象を持った。

何しろいまだに「ポーランド人600万人がドイツに殺されたのでポーランドの人口が立ち直っていない。EUにおける予算配分にはこういう要素も考慮すべきだ」といったことを大統領が発言したりするお国柄だ。

私はドイツが第二次世界大戦後、占領していたフランスとの関係を修復しヨーロッパ共同体の中核たりえたのも、1000万人を超えるソ連市民の命を奪いながらも独露関係を修復できたのも、600万人のユダヤ人殺害にもかかわらずイスラエルとの間で正常な関係を取り結べたのも、ひとえにドイツ政府のこの一貫した態度にその一義的な原因を求めることができる、と考えてきた。

「一義的」と書いたのは、たとえば独露関係で言えば、進攻された側のロシアでは旧ソ連時代にスターリン批判を行い、まがりなりにも「自分たちの為政者も自国民に対してナチス・ドイツ並みのひどいことをしてきたのだ」との認識を持った、という素地がソ連の側にも準備されていたからだ。

私は中国や韓国に対して、日本は公式にはキチンと謝罪しそれなりの対応をしていると考えている。にもかかわらず中国や韓国はことあるごとに日本の過去の責任をあげつらう。政権党であった自民党の政治家が無神経な発言をして、政権与党である自民党のホンネが透けて見えただけに、中韓につけ入られやすい素地があったことは事実だ。

しかし中国では、日本の中国侵略の結果死んだ軍民の数約1000万の数倍にあたる数千万の中国人が中国共産党の統治下で死んでいる事実は封印されている。「独露関係のような日中関係が出来上がるには、日本側が不用意な発言や行動をとらないと同時に、中国が自国の歴史を覚めた目で直視できる状態になるまでは無理」というのが私の評価だ。

しかしポーランドの姿を見ていると、「なかなか過去を率直に認めない国」の他に、「なにをやってもなかなか許してくれない国」というものもあるのではないかという気がする。しかしそのポーランドでもドイツとロシアに対しては評価が異なるという。


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