2011-06-19
否、止めるという操作を開始しても、制御棒が正しく挿入されたとか、その後冷却が継続できるとか色々な条件が揃わないと原子炉は動き続ける。つまり暴走する。日本の電力会社が深夜電力の利用を積極的に推進していたころ「原発の出力調整が容易でないので、ずっと一定の電力を発電し続ける。そのため夜間に電力が余るので夜間電力の需要促進をする必要がある。」という説明が「何で深夜電力がそんなに日中の電力より安いのか」という消費者の疑問に対する説明として用いられてきたが、これはまさに「スイッチを切ったからといってスッキリ止まってくれない」ことを電力会社自身が認めている証左だ。「色々な条件」に燃料棒を抜いてからもその燃料棒をプールに移し、プールに冷たい水を注ぎ続け冷まし続けないと燃料棒が勝手に発熱をし始める、なんていうこともあるなどということは今回私を含めて初めて知った人が多いのではなかろうか。
最後に原発からの放射能漏れはどうやっても防ぎようがないという点だ。
この問題は最初に指摘したコストの問題ともからんでくる。従い、どこかで「許容できる範囲の漏れ」の線を引かないとならなくなる。しかし漏れるものが放射線で前述のとおり「その半減期が一部を除けば、人間の寿命から言えばほとんど未来永劫だ」ということに着目しなければならない。微量の漏出であってもチリも積もれば山になる。現在設定されている「許容できる」のレベル設定に多分に恣意性を感じるのは私だけだろうか?
そうはいっても、今すぐ日本の原発を全部止めてしまうということはなかなかできない。ボイジーに行く飛行機の中で会った原研の技師のいうように原発は「日本の電力供給の中でなくてはならない存在になっている」からだ。
私は計画的に日本の原発はすべて閉鎖してゆくべきだと思っているが、閉鎖計画立案にあたってはキッチリ代替すべき発電プラントの建設計画や、その発電プラントで利用する技術の開発に関する計画の策定が必要だ。
代替案としては比較的早めに(と言っても決めてから数年かかるが)投入できるのが天然ガス発電だ。ただしこれは低炭素社会実現の方向には反する。従い当面の対策にしかならない。低炭素社会実現には原発のようなエセ代替エネルギーではなく、太陽光発電や風力発電のような真の代替エネルギー開発を志向する必要がある。
しかし日本のように冬があって、雨もよく降る国で太陽光発電は効率が悪い。風力発電も日本のように夏(つまり電気の需要期)に風が凪ぐ地方が多い国ではあまり有効ではない。風が凪ぐ夏の後には風力発電の運転を止めねばならない台風シーズンが到来するからいっそう始末にこまる。
私に考えられる有効な手段は地熱発電と潮力発電だ。波力発電もありうるが、こちらを推進すると、恐らく海岸線のかなり大きな部分を発電設備建設にとられることになるので、景観という視点から言ってあまり勧められない。
このような私の立場からすると、これから日本の為政者に求められるのは
原発開発や原発建設に回す予定にしていた予算は、効果的なプラントと放射性廃棄物の廃棄手段の確定にのみ集中させ、後は石炭、石油、天然ガス発電プラントの効率化、及び地熱、潮力発電技術の開発に集中させるべきだ
ということになる。
追記: 低炭素社会に関する私の考えを書いておく
今現在低炭素社会実現に関する世界的な取り決めは存在しない。それに最も近い存在である京都議定書には、世界第一と第二の温室効果ガス発生国であるアメリカと中国が参加していないという重大な欠陥がある。
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