TNK-BPとユーコス -- ロシアは法治国か?
2011-05-26


スウェーデンでの仲裁審判の結果、AARの言うことが正しいという結果が出、BPとロスネフトの株式交換にストップがかかったため、BPはRosneftの助けも借りてAARの株式の買収にかかったが交渉が週末に決裂、BPとロスネフトの提携話が破談となったわけだ。

既に書いたようにロスネフトはロシアの副首相を社長にいだく国営石油会社だ。石油メジャーの
BPとロスネフトの株式交換は、ロシアの国策企業を石油メジャーの大株主にしたうえに、BPの極地における石油探鉱・掘削技術を取り込む、というロシア政府のエネルギー政策の一環だったはずだ。それがAARなどという資本家グループの抵抗にあってあえなく破談になるとは…ロシア政府はAARのオーナー連中をホドルコフスキーのように抑えるこむことができたはずではなかったのか?とおそらくBPの関係者は思っているのではないかと思う。

BPは2008年にAARとの間でTNK-BPの経営をめぐって争っており、そのときAAR側があれこれ当局に手をまわしたのだろう、BP側出向者が一時的にロシアから出国できなくなったりするという事態に遭遇している。このときはBPから派遣されていたCEOが退任し、AARのメンバーの一人が
CEOになるという形で決着したが、恐らくそのときBPはロシア政府と味方につけAARを抑えることが必要だと感じたはずだ。そしてAARを抑えることのできる強力なパートナーとの関係構築を図っていたのだろう。「強力」という視点からいえばロスネフトは最強のパートナーのはずだった。この切り札が意外に使えなかったというわけだ。AARがプーチン首相の弱みを何か握っているのだろうか?

一説によると、AARの資本家グループはスウェーデンでの仲裁審判が出た時点でプーチン首相に「審判の履行に介入するか」お伺いを立てたところ、プーチン首相は法の定めるところに従う(つまり介入しない)との確信を得たのでBPとロスネフトを相手に回して強気の交渉を行ったというが真相はやぶの中だ。

メドヴェジェフ大統領は5月18日に「BPもロシア政府関係者もTNK-BPの合弁契約をもっとよく読んでおくべきだったのではないか」と苦言を呈しているが、この発言を額面通りに受け取れば「契約にキチンと書かれていることが守られて当然だ」と大統領が言っていることになる。

ホドルコフスキー裁判の時は政府が審理に介入し、TNK-BPの時は政府が法の定めるところに結着をゆだねたとなると、ロシアがどこまで法治国家の体裁をとり、どこまで人治国家としての恣意性を見せるのか、今回の一件でちょっと不明になったといってよいだろう。

ちなみにメドベジェフ大統領とプーチン首相は共にソ連時代から有力法曹を輩出するレニングラード(当時、現サンクト・ペテルブルグ)大学の法学部出身の法律家だ。




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