多様性について (2/2)
2011-05-15


多様化推進の旗振りをしながら水を注ぐようだが。多様性をすすめることによる副作用の話をしなければ、私がブログで書いていることは単なるアジ文で終わってしまう。

クリケットの世界 追録」でも書いたように、紳士のスポーツとされるクリケットに八百長疑惑がおこっている。「地獄の沙汰も金次第」という感覚が日本よりもはるかに強く存在している南アジアの国々が「紳士の競技」といわれるクリケットで大活躍し、クリケットが南アジアの国々の「国技」になってきたことに伴う現象だ。ちなみに現国際クリケット連盟International Cricket Council会長のシャラッド・パワールSharad Pawarはインドの政治家で、出身のマハラシュトラ州の農業用地の用途変更で巨額の利益を挙げているとされている。ここまで来ると果たしてクリケットがいまだに「紳士の競技」との形容に価するのかどうかには大いに疑問がわくところだ。

5月11日、ニューヨークの連邦地方裁判所はヘッジファンドのガレオン・グループGalleon Groupの主宰者ラジ・ラジャラトナムRaj Rajaratnamに対し、インサイダー取引を首謀したかどで有罪判決をだした。この裁判にはラジャラトナムに対するインサイダー情報の提供者として大手経営コンサルタントマッキンゼーMckinsey & Companyの代表社員Partner アニル・クマールAnil KumarクマールやマッキンゼーCEOのラジャット・グプタ(職責はいずれも元)が登場している。Wall Street
Journal、Financial Times、New York Timesなどの報道によれば、世界金融危機の影響で欠損を出したゴールドマン・サックスGoldman Sachsが著名な投資家ウォーレン・バフェットWarren
Buffetが率いるバークシャー・ハサウェイBerkshire Hathawayの出資を受け入れることを決めた取締役会の直後にゴールドマンの社外取締役であったグプタは、その事実をラジャラトナムに電話で伝えたと言う。またクマールは情報料を受け取る目的でスイスに銀行口座を開設していたという。

インサイダー取引の摘発ならいくらでもあるが、経営の統制や管理を専門とする経営コンサルタントの、そのまた業界の頂点ともされ日本企業にも多数の顧客を持つマッキンゼーの(彼の大前研一はその昔マッキンゼーの経営幹部だった。大前のグプタ評を聞いてみたいものだ)、つまりは資本主義の中枢をサポートする企業の最高責任者や代表社員がインサイダー取引に加担したとしてあげられたとなると事態は深刻だ。

ちなみにマッキンゼーの英語のウェブサイトにしても日本語のウェブサイトにしてもグプタ、クマール両名の引き起こした問題に関する会社としての声明は、私が行った簡単なサイト検索では引っかからない。しょうがないので簡単に出てくる同社の行動規範をみると、日本語サイトでは以下が簡潔に記載されている:

最高のプロフェッショナルスタンダードにこだわる

Uphold absolute integrity. Show respect to local custom and culture, as long as we don’t
compromise our integrity.

プロフェッショナルとして行動する
絶対的な倫理規範の支持。我々の倫理規範を損なわない限り現地の慣習や文化に敬意を払う。

Keep our client information confidential
We don’t reveal sensitive information.


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