2010-03-27
3月25日夜、ユーロ圏の首脳はギリシャの金融危機への対処方針に合意した。合意によれば、ギリシャ政府が自主的に国際金融市場で資金調達ができない場合、ユーロ圏諸国とIMFが協調してギリシャ政府に金融支援を行うことになっている。これでギリシャは国際金融市場における政府の資金調達が可能となり、当座の金融危機を脱した。合意は今後も起こるであろうこの種の問題に対するEUとしての対処法をまとめた画期的な内容だが、そのまとめ方を見ると実に巧妙に今回の問題に対するユーロ圏諸国相互の意見の違いを繕う内容になっており、EUがどのように動くのかを示す好材料になっている。
ギリシャの金融危機問題についてまとめてみよう。
2009年10月4日、ギリシャで総選挙が行なわれ社会民主主義政党のPASOK(汎ギリシャ社会主義運動)が得票の43.92%を獲得し第一党となった。それまでの与党であった新民主主義党のカラマンリス首相は大統領に辞表を提出、大統領がPASOKのパパンドレウ党首に組閣を要請、
PASOK内閣は10月7日に発足した。
2010年予算の作成に当ったPASOK政権は前政権が大幅な国の財政に関するデータのの改ざんを行なっていたことを発見する。ギリシャはユーロ圏の一員だ。マーストリヒト条約によってユーロ圏諸国の財政赤字はGDPの3%未満、国の負債はGDP比60%未満にそれぞれ抑えねばならない。もっとも2008年以来の金融危機に伴う不況に対処する過程で各国ともこの基準から逸脱しているのが実情だ。多少のところは許されるところだが、PASOK政権が改めて計算した結果、このままでは2010年度の財政赤字幅がGDPの12.7%となる、政府の負債がGDPの130%超になる、といったことが次々に明るみに出た。この結果PASOK政権は社会民主主義政党であるにもかかわらず公務員の削減や賃金カットや社会保障の給付削減を含む緊縮財政を打ち出すことを余儀なくされ、その結果ギリシャ国内では公務員ストなどが相次ぐ事態となっている。
ことがギリシャだけであればなんとかなったのだろうが、ユーロ圏にはスペイン、ポルトガル、アイルランドといった不動産バブルの後遺症に悩むメンバーや、イタリアのように今後政府負債が120%強になると予想されるメンバーがいる。ギリシャも含めてこれらの国々を一まとめにしたPIIGSという総称もできた。ギリシャ問題はユーロ圏としてこのような事態にどのように対処するのかのテストケースだ。
ユーロ圏最大の経済を持つドイツは「自主解決が原則だ、どうしてもだめな場合はIMFの出動を仰ぐべきだ」という態度をとった。これは「EU諸国は相互に財政援助をしない」という相互の関係を取り決めたマーストリヒト条約の原則にのっとった正論ではあるが、いたずらに正論を主張しても現下の経済情勢には対処できない。ドイツが正論を主張した背景は「本年度の財政赤字がGDP比5%台、国の借入金もGDP比約77%と比較的健全な状態を維持している上に、輸出主導で経済が再び成長し始めている状態で、ギリシャ救済のシリを持ち込まれては困る」という実にもっともな国内の声に配慮したものだ。
しかしIMFを絡ませることに問題はないのだろうか?IMFがこの種の問題に対処する際の処方箋は、政府の財政支出の削減と輸出競争力向上のための通貨切り下げだ。ユーロ圏に属するギリシャに通貨切り下げの選択肢はない。「そのような機関に何を頼むのか」というフランスやECB欧州中央銀行の疑問はこれまた至極もっともなものだ。
このようにユーロ圏としての方針が定まらず方向性がつかめない。金融市場は方向性がつかめないことを嫌う。これがユーロ安となって現れた。
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