結婚式二題
2009-12-30


さてインドにはdowry持参金制度が根付いている。男子が嫁を取れば、持参金がごっそりついてくるし、結婚式の費用も基本的にはすべて新婦側持ちだ。何百人もの招待客をよんで、一週間にわたる儀式をするのだから結婚式には相当お金がかかる。このためもあってインドでは貧しい家庭で女の赤ちゃんが生まれると両親が乳児をミルクに溺れさせて間引いてしまうという事件が後を絶たない。件のインド人の知人は一男一女の父親なので「一勝一敗だ」といっていた。「モンスーン・ウェディング」でも花嫁の父が金策のためゴルフ場でラウンドしながらあちこちに電話をかけまくるシーンがあったが、あのシーンを見て身につまされたインドのお父さんはたくさんいただろう。

それにしてもパンジャブ人の結婚式は本当に派手で楽しい。「モンスーン・ウェディング」では披露宴司会役の叔父さんが宴席の開始を宣言すると共に踊り上手の親類の踊りを皮切りに、それが終わると参加者がどんどん踊りだしというシーンがあるが、実際の結婚式もおおむねそのとおりに進行する。知人の令息の結婚式ではまず新郎側家族若手によるボリウッド映画式のダンス(皆さん一週間くらい練習したらしい)の後は参加者一同老若男女入り乱れての踊りとなった。デリーで参加したことがあるもう一組のパンジャブ人の結婚式では、新郎新婦の出会いをボリウッド式の踊りで表現すると言う趣向の後、これまた参加者一同老若男女入り乱れての踊りとなった。この結婚式の振り付け、インドの経済成長とともに年々派手さが増している由だ。どっしり座っているおばあちゃんが「おもわず」といった感じで立ち上がって踊りの輪に加わるのを見ると、パンジャブ人の間では本当に結婚式の踊りの輪が根付いているんだなぁと思う。

さて話が変わって、東南アジアの華僑。私の甥がインドネシアの華僑のお嬢さんと結婚することになり、その結婚式のためジャカルタに行ったことがある。式次第にtea ceremonyと書いてあって、通常tea ceremonyとは日本の茶道の英訳のため「なんじゃろう」とおもっていたら、新郎新婦が両家の家族の主だった面々に跪いてお茶を献上するという儀式だった。この辺は「いかにも儒教的な」という印象を受けたが、さてジャカルタの一流ホテルの宴会場を借り切っての披露宴。何百もの招待状を配って何百人もの招待客をよぶところまではインドと同じだった。ちょっと趣向が違うのが取引先からの花輪が続々とホテルに届き、ホテルの正面玄関付近に並んだことだ。ところが披露宴のほうは、両家の紹介以外はもっぱら立食パーティー。一応ダンスミュージックがかかったので踊ったりしてみたが、観客のほとんどは談笑しているだけで踊りの輪に加わらない。司会者がOh, oh, look at the Japanese guests dancing, come on ladies and gentlemen join the dance(日本からのお客さんが踊ってますよぉー、皆さんも踊ってください)と声をからす始末。そのうち新婦側の叔父さんがカラオケで自慢ののどを数曲披露した。「さすが日本の会社と取引関係のあるインドネシアの華僑」と思ったり、「ああ華僑はカラオケ文化なんだ」と妙に感心したり。日本的、というか日本の本土的。沖縄の結婚式は素人芸能オンパレードと聞いていたので「より沖縄の文化に近い東南アジアなら…」と期待していたのが完全に外れた。新婦の親族にシンガポール人がいたので、シンガポールの結婚式の様子を聞くと「まあ同じようなものだ」とのこと。聞くところによると中国の結婚式も「歌や踊り」にはならないらしい。香港の結婚式にいたっては披露宴の会場の一角に雀卓が何卓か並んでいて、麻雀好きのお客はそちらに直行するときく。

さて、これを読んで読者はどちらの結婚式のほうに出たいと思うだろう?「出たい=見たい」なら、まあ間違いなく先般の私の会社の同僚のごとく華やかなサリーが舞う、歌や踊りで盛り上がるパンジャブ人の結婚式だろう。しかし「出たい=参加したい」なら?


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