Financial Reform 〓 Our way forward
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はもともと英国の経済紙Financial Timesの投稿欄に投稿するつもりで書いた原稿に手を加えたもので、それなりの英文で書いている。ちなみに当ブログの「Clawback(所得の返還)」
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と「衆院選における民主圧勝について」
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に関連する内容で投稿した文章はそれぞれFinancial Timesの投稿欄に掲載されている。
ある読者から「Financial Reform 〓 Our way forwardは読んでもわかりにくいので日本語でアップしないのか」と問われた。実はここで書いた内容は
* 現在の日本の金融機関にはあまり当てはまらない内容であること
* これまでこのブログで書いてきたことと結構ダブル
ので、果たしてここに解説版を掲載しようかどうか迷っていたが、その読者の勧めもあって「現代欧米金融事情解説」という意味あいも含め、ここにその解説を掲載する。
アメリカのゴールドマン・サックス(「投資銀行のゴールドマン・サックス」と書きたいところだが、アメリカの金融危機に伴い2008年9月に銀行持株会社となっている)は2009年9月末現在で167億ドル(約1.5兆円)のボーナス原資を積み上げている。ゴールドマンには400名強のパートナー(代表社員)と言われる、会社の利益配分を直接受けられる人々がいる。ボーナス原資のうち約1/3がパートナーの取り分といわれており、本年9月末現在でゴールドマンのパートナーは単純平均で一人当り1392万ドル(約12.5億円)のボーナスの権利を今年の9ヶ月だけで獲得したことになる。ゴールドマンの業績は更に好調だと言うことなので、ゴールドマンのパートナーをやっていれば単純平均で今年20億円くらいのボーナスが転がり込んでくると言うことになる感じだ。さすがにゴールドマンもこのままではまずいと思ったようで、11/17に「向こう5年にわたり会社として中小企業振興のため5億ドル(約450億円、ボーナス原資の約3%)を支出する」と発表した。
金融危機によって招来された世界同時不況発生の結果「パートナーも含むゴールドマンの社員がこれだけのボーナスをもらうことに妥当性はあるのだろうか?」と言う疑問が当然沸き起こった。
* Counterparty Risk(契約相手方のリスク)
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でも書いたAIGのカウンターパーティーリスクをアメリカ政府に引き受けてもらって利益を出しているのに、何故?
* 政府が資金を供給し続けている金融市場で債権の売買益を計上しているのは、金融市場の方向が比較的単純に読めるだけに低リスクでお金をもうけられる状態になっているからではないか?
* ベア・スターンズとかリーマン・ブラザースと言った競合相手が倒産した、つまりは競合条件が良くなった市場でこれだけの利益が出るのはあたりまえではないか?
この種のコメントはゴールドマンのみならず、今年空前の好決算をあげることが見込まれる欧米の一部金融機関すべてについていえることだ。
これらの声に対しゴールドマン側にそれなりの言い分があることは事実だ。しかし、アメリカ政府が当時AIGのカウンターパーティーリスクを引受けず、結果的に金融恐慌がもっと激しい形で展開していたら、そしてその結果AIGのカウンターパーティーリスクが満額で発生するのみならず他の金融商品でも発生したら、ゴールドマンの純資産を超える損害が発生し、ゴールドマンといえども倒産の危機に瀕したことは間違いない。
要は、政府の金融市場支援で息をつないげた金融機関が、制度の恩恵のおかげで計上できている利益で多額のボーナスを支払うのは、合法的かもしれないが倫理的には首を傾げざるを得ないということだ。
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