2009-10-09
ここ二週間はインドから旧友夫婦が観光で来日し、そのアテンドで振り回され記事の更新が遅れた。
彼らの離日を機に「21世紀のアジアを背負って立つ」といわれる両国について考えてみた。
「インド人は中国人のことをどう思っているのだろう」と言うのは私が常日頃関心を持っているところだ。「インド人も中国人もお互いのことを必ずしも好ましく思っているわけではない」と言うのが私の認識なので、旧友夫妻に「中国のことをどう思う」と聞いてみたところ、ご主人(ホテルの設立に関するコンサルタント)が「中国は安い資材の供給源だ」と言ってインドでホテルを建設する際どのような資材を中国から調達するかアレコレ説明しだした。Your client bought imitation Roman statues from China for his hotel didn’t he(そういえばあなたのクライエントが自分のホテル用にローマ時代の石像の中国製の模造品を買ったわよね)と奥さんがつけ加える。
インドと中国は国境問題で砲火を交えたことがあるし、いまだに国境紛争を抱えている。その際たるものがインド東部のアルナチャル・プラデシュ州をめぐるものだ。中国は「この地はチベット南部で本来中国領である」との意思をことあるごとに表明している。直近ではアジア開発銀行理事国としてアルナチャル・プラデシュ州向け融資に待ったをかけたりしている。インドにはまた中国にとって獅子身中の虫のようなチベット独立運動の本拠地があってその最高指導者であるダライ・ラマが住んでいる。
私は以前いくつかの機会にインド人から或いは中国人から相手に対するある種の緊張感や蔑視の表明を聞いたことがあるので、もう少し「いやぁあまりシックリこない隣人なんだ」的な回答がでてこなかったことにちょっと拍子抜けになった。「インドの新聞や雑誌を見ていると結構中国のインドに対する発言や行動に対してsensitive(ピリピリしている)な印象を受けるが…」といったらややあって奥さんがTrue, we are not entirely comfortable with them(確かに、彼らに心を許しているわけではない)と言った。まあこれは私に同意したと言うよりは、私に合わせてくれたと言うことかもしれない。
これにはちょっと考えさせられた。別に一組の夫婦の見解ですべてを語る気はないが、私なりに友人夫婦の反応を解釈すると以下のようなことになる。
インド人は個人レベルでは自分の利益をまず考えて自分の行動を割り切る国民だ。インドのホテルマンにしてみれば「何でこんなものインドでできないんだろう」と疑問に思いつつも、インドの貿易がかなり自由化された今、インド製よりも安くて品質の良い中国製品があればどんどん買い付けるというところだろう。
「中国に対するにインドカードの行使」を考える場合、こちらがインドに対して中国以上のメリットを呈示できなければそのようなカードは絵物語だ。
さて、民間レベルではそれなりの交流のある中印両国だが、中国はケ小平の改革開放政策が登場する1978年まで、インドはそれに遅れること10年以上の1991年ナラシムハ・ラオ政権のマンモハン・シン蔵相(現首相)の経済開放政策まで、それぞれ民間部門の自由な経済活動を制限し政府の経済計画に基づく統制経済をしいていた。経済統制のくびきを解かれてからの両国経済のめざましい成長ぶりの結果、両国は21世紀を背負って立つ国として認識されている。
極論すれば両国の共通点はそこまでだ。ここから先は両国の差は極めて大きい。次回はこの差の部分について書いてみよう。
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