インドの財閥--ビルラ財閥
2009-08-29


ビルラ一族はインド西部の砂漠地帯をカバーするラジャスタン州出身のMarwari(マルワリ)だ。マルワリとは「マルワール地方出身者」という意味だが、通常インド人の間でマルワリといえば、先祖がこの地方出身の商人やビジネスマンのことだ。彼らの多くは敬虔はヒンズー教徒で菜食主義者だ。マルワリの人口のほうがパルシー(パルシーの説明については「インドの財閥〓タタ財閥」
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ご参照)の人口より多いこともあって、インドではマルワリ系の財閥のほうがパルシー系の財閥より数は多い。数あるマルワリ系の財閥の中でビルラ財閥はその筆頭であった。

マルワリ相手のビジネスで誰もが直面することは、彼らがお金には厳しいということだ。価格交渉がシビアだし、得た利益の蓄財にも熱心だ。投資したお金を長く寝かせておくことも一般的には避ける傾向がある。「果てしない値切りに辟易とした」とか、「工業に投資するにしても、とにかくスグ資金の回収をはかる」といった話は大体マルワリ系の企業を相手にしての話だ。まだ私がインド・ビジネスに関与していなかった頃、知人のインド人に「お前の会社はインドではどこと付き合っている?」と訊かれ、いくつか名前を挙げたら”They are all Marwaris”(全部マルワリじゃないか)といわれて上述のようなマルワリの特徴について説明を受けたことがある。インド人の間でもマルワリはガメツイという風評があるわけだ。

話をビルラに戻そう。インドの企業グループを見る場合、財閥としての統制ということで言えば
「Ambani(アンバニ)一族物語 1/2, 2/2」
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で書いたムケシュ・アンバニのReliance Industries Ltd (RIL)がもっとも強く、グループ企業間のつながりを作ろうと模索しているタタがその次かもしれない。

ビルラ財閥についていえば創始者G. D.ビルラ存命中は、同じビルラ系の企業が競合することは日常茶飯、という傘下各企業の一見無秩序な企業活動にその特徴があった。G. D.ビルラはあるとき「ビルラ財閥など存在しない」と公言したという。しかし「いくら儲けているのか」という部分での管理はキチンとやっていたのがもう一つの特徴だ。ERPとかEDPとかいったものが存在していなかった頃から傘下各企業が毎日その日の生産量や損益や現金ポジションを本社に報告するparthaといわれるシステムが存在していたのは注目すべきポイントだ。

通信事情が改善された今ならいざ知らず、’60年代とか’70年代とか国内通信事情の悪いインドでインド各地に散らばるビルラ系企業の各事業所がその日の生産量や損益をまとめ、それをキチンと当主に報告していたというのは驚くべきことだ。まだインドの長距離通信が不安定であった頃、あるビルラ系の企業の本社に行ったら日が暮れるとテレックスのオペレーターが必死に傘下の工場とのテレックスの回線を確保し、回線が通じるとその工場からのデータが刻々とテレックスで入ってくるのを見て、感心というよりむしろ感動したことを覚えている。現在の日本の企業で、世界中の拠点からその日のうちにこのようなデータを集めて本社に報告が上がるシステムが出来上がっている企業はどれくらいあるのだろう?


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