どうも風穴は開いている--TPP論議で欠落している視点
2015-02-05


Spiegel誌の

 TTIP(環大西洋戦略的経済連携協定)についてヨーロッパでは懸念が広がっており、その
 主たる原因はTTIPで議論されている紛争解決条項だ

という記事を紹介した.。たまたまその直後に日本の大手弁護士事務所で海外の事務所との提携を主導している幹部と会食する機会があった。Spiegelの記事を紹介した上で「日本のTPP議論ではこれは論点になっているのですか?」と質したところ「日本の法務省はまったく内向きで、日本ではそんな議論はまったく出ていません」と明快にいわれた。

エエッ!?

ヨーロッパでは紛争解決条項が結構TTIPに関する議論の目玉になっている証がもうひとつ出てきた。今度は2月3日付のイギリスのFinancial Timesに掲載された"Petitioners' fears over[LINK]
EU-US trade deal well-grounded"(根拠あり、EU・アメリカ間の貿易協定に関する請願者の不安)と題する論説記事だ

内容は以下のようなもので、やはりアメリカの大企業が国の公共政策に対して国際審判で挑んでくる危険性を指摘するものだ。

* ヨーロッパではTTIPに反対する署名が100万をこえ、イギリス国内のネットを使った調査で
     は「イギリスに利益をもたらさない」とする立場をとる回答が「利益をもたらす」という回答の
   3倍となった

* 交渉内容の一部をEUが開示し始めたが、その中のinvestor-state dispute settlement 
     (ISDS、投資家対国家の紛争解決手段)の部分が議論をよんでいる

* アメリカは発展途上国相手の貿易協定でこの条項の挿入を一般的に適用しているが、
     発展途上国ではないカナダも加盟国のNAFTA(北米自由貿易協定)にもISDS条項がある

* ISDS条項は投資家の資産が国家によって強制収用されたと思われる場合、投資家が紛
     争を国際的な審判に持ち込むことができるという内容だ。この条項に基づいてアメリカの
     大たばこメーカーのPhilip Morrisが香港とオーストラリアに対し「現地でのタバコの広報
     に制を加えたため資産が毀損した(つまり資産の一部を強制収用された)」として両国を
     国際的な仲裁審判に持ち込んでいる。

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